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以外と知らない「ヘッジ・ファンド」の動き(コラム)

高市政権が誕生し、日経平均株価は経済対策への期待から高値を維持してきましたがここ数日大きく値を下げています。
その一方世界に目を向けると、トランプ政権の世界を巻き込んだ関税政策も半年が過ぎ、各国および企業も柔軟に対応している結果として好決算の報告が増えてきました。
そこに加えてIT大手や半導体企業が更なる好業績を発表していることから、アメリカ株を中心にこちらも過去最高値圏を維持している状況です。
こういった株高は一人一人の投資家や金融業界などの機関投資家とは別に巨額の資金を運用している「ヘッジファンド」の動きにも大きく作用されています。
「ヘッジファンド」とは短期の利益追求に特化したファンドのことです。
ヘッジファンドは多くの個人や企業、投資家達から資金を預かり利益をあげるべくいろいろなもの(主に金融商品)に投資し、その利益を投資してくれた方々に決算時に分配します。
よってヘッジファンドは実績によって評価され、良いパフォーマンスを上げ続ければ多くの資金を常に運用できることになります。
そして資金が集まれば集まるほど、その運用先がどうなるかで世界中の株価や為替に大きな影響を及ぼすこととなるのです。
ヘッジファンドが起こした世界に影響を及ぼした出来事を例にあげるとその影響力がよくわかると思います。
有名なヘッジファンドが起こした世界的なニュースをあげるなら、イギリスの「ポンド危機」やタイから拡がった「アジア通貨危機」などが思い起こされます。
イギリスは今でこそ欧州連合(EU)から離脱し通貨もポンドを自国通貨として利用していますが、1993年に設立された「欧州連合(EU)」には当初から加入しており、統一通貨(ユーロ)にも参加する計画でした。
(但し、当時のイギリス国内ではこの統一通貨への参加には懐疑的な意見が多数であったといわれています)
通貨をポンドからユーロに切り替える準備をしていた中、その時のポンドの価値に疑念を抱いたヘッジファンドが空売りを大量にしかけ、その結果ポンドは暴落しイギリスは統一通貨ユーロへの参加を見送ることとなります。
この時のヘッジファンドを率いて莫大な利益を上げたといわれるのが世界三大投資家の一人「ジョージ・ソロス」です。

彼が「イングランド銀行を潰した男」と言われるのはこの事によります。
よってイギリスはポンドを使い続ける事になるのですが、皮肉にも統一通貨ユーロに参加しなかった事がその後のEUの景気低迷に巻き込まれずイギリス経済を安定させたという結果を招くことになるのです。
アジアでも1997年、タイの通貨バーツが過大に評価されていることに目をつけたヘッジファンドグループの攻撃により、タイの通貨バーツは暴落してしまいます。
この影響がアジア各国を巻き込むこととなり「アジア通貨危機」と言われる歴史的な出来事として記憶されることとなりました。
ちなみにその当時の日本はバブル景気崩壊後の影響がアジア通貨危機に加わり、金融機関の財務状況がさらに悪化している状況でした。
そのため日本銀行は政策金利の引き下げを行い、その結果1998年10月7~8日の2日間で20円も円高になってしまうのです(140円台から120円前後へ)。

このように大きな信頼と実績をもつヘッジファンドは、場合によっては一国の国家運営にも影響を及ぼすのです。
そんなヘッジファンドですが、決算をどうまとめるかは重要なポイントです。
12月末に決算を迎えるヘッジファンドが多い中、翌年度も投資家から資金を預けてもらうためには利益を上げ続ける必要があります。
投資家はこれらファンドに引き続き投資を依頼し続けるかどうかは決算の45日前までに判断しなくてはならない(45日ルール)ため、12月決算であれば11月15日までにヘッジファンドは好業績をアピールする必要があるのです。
そのため例年10月~11月期にかけて株価や為替が荒れることが多いとよく言われます。
特に年間通して主に株価などが安定して上昇しているような場合だと、この時期に一気に利益確定や乱高下が起こりやすくなるのです。
2025年度でいえば、4月頃にトランプ関税始動による先行き不透明が理由で株価が乱高下しました。
しかしその後約半年、右肩上がりで順調に推移して(推移しすぎて)います。
10月からの1か月半、アメリカの代表的な株価指数S&P500をみてみると短期間に乱高下しているのがわかります。

今年はアメリカでトランプ政権が暗号資産に力を入れていることからビットコインなども積極的な投資対象となっていたため、こちらは株価以上に上下していました。
この短期間(10月から11月半ば)で25%も上下しました。

様々な理由で株価などは日々変化するのですが、ヘッジファンドなどの都合もこれら価格変動に影響があるのかもしれません。
そういった観点をも持ちつつ、今後の投資などの参考にしていただけますと幸いです。

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