• NEWS

ゼロ金利政策とマイナス金利政策の違い(経済基礎知識)

一昨年(2024年)3月に日本銀行(以下、日銀と表記)が大規模緩和から方向転換し久しぶりに日本も「金利のある社会」に進みだしました。そして昨年7月31日に16年ぶりとなる0.2%以上の利上げに踏み切りました。
※詳細は2024年8月21日付のトピックスをご覧ください。
今となっては過去の話になりますが、昨年3月まで長らく続いた「マイナス金利政策」と3月以降および2016年以前まで続いていた「ゼロ金利政策」の違いについて日本の金融政策という点で解説しておきます。

1)マイナス金利政策
2016年1月29日に日本銀行は、民間銀行の日銀当座預金にある超過準備に対して-0.1%のマイナス金利を課すと発表しました。
日本のある種の金融機関は日銀に各金融機関が引き受けている預金等の一定比率を日銀に預けることが義務付けられています(準備預金制度)。
その預入れしているお金に対し日銀は利息を支払います。
ですから民間銀行は日銀にお金を預けることで利息収入を得ることができるのです。
そこで日銀は民間銀行が日銀に預入れしているお金を減らし民間への融資や投資に資金を振り分けるよう、預入れなければならない最低金額(法定準備預金額)を超える金額(超過準備)について逆に利息を徴収(ー0.1%)すると決めたのです。
それまでは民間銀行は日銀に預けておくだけで一定の利息を得ることができたのですが、マイナス金利政策導入後は逆に利払いをする必要が発生します。
よって民間銀行は日銀からお金を引出し、民間投資へと振り分けることを余儀なくされるのです。
※しかし実際の効果としては限定的であり、このマイナス金利政策を採用したことで金融機関の民間投資は増加していないとの見方もあります。
2)ゼロ金利政策
銀行同士が短期でお金を貸し借りしている市場(コール市場)に日銀が介入して、大量の資金(日本円)を供給することで市場金利を0%近くに誘導する政策です。
※コール市場とは金融機関同士が短期資金の貸し借りを仲介する市場です。主に銀行、信託銀行、証券会社などが参加しています。
銀行同士で低い金利で資金が融通(資金調達)できれば、民間への融資の金利も低くすることができます。逆に銀行がお互いに高い金利で資金を融通しあえば民間への貸し出し金利は上がります。
この「ゼロ金利政策」は、1999年にバブル崩壊後の最悪の経済状況を乗り切る中で大規模な財政政策が必要となり、短期金利の指標であるコール市場の金利を史上最低の0.15%に誘導することを日銀は決定します。
そして当時の速水総裁が「金利はゼロでも良い」と発言したことから大規模緩和による「ゼロ金利政策」が始まりました。
補足ですが、銀行同士が金利を基本的に決定する自由金利が今の日本の金融市場ですが、銀行同士の金利(以下、コールレートと表記)が上がり過ぎないよう「補完貸付」の制度も2001年に採用しています。
これはコールレートが高くなりすぎた場合、日銀が基準貸付利率(昔は公定歩合と呼ばれていました)にて民間銀行に融資できる制度です。
現在この基準貸付利率は0.75%。6月11日付のコールレートは0.477%。よっておよそ0.25%ほどはコールレートを引き上げる余地があるとも言えます。
よってこの基準貸付利率が民間の短期金利(コールレートなど)の実質の上限金利となるのです。

このように金融政策においては似たような言葉がたくさんあります。
今回取り上げた「ゼロ金利政策」「マイナス金利政策」も政策の意味合いがかなり違います。
これら政策や制度を正しく理解することで株式投資・為替・企業経営など政治と金融情勢を正しく読み解き、先読みした対策が出来るようになると思います。
詳しくお知りになりたい方はお気軽にお問合せください。
また勉強会やセミナーなどのご相談もお受けしております。

一覧に戻る