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国債と金利の関係について(経済基礎知識)

4月2日にアメリカ・トランプ政権が打ち出した追加関税策にて世界中のお金の流れが変化しつつあります。
この関税策等を理由に世界経済に大きな影響が及び、アメリカ国債が売られるなど日々ニュースに取り上げられています。
今回はこの『国債』の仕組みについて政府や中央銀行の金利政策と関連づけて解説します。主に日本政府・日本国債を例に説明します。
まず「国債」とはもちろん政府が発行する債券、つまり借金となるものです。政府が年間通して政府運営をしていく予算を組むうえで不足する資金を「国債」として市場に販売し資金調達をします。
この国債は誰しもが直接購入できるのではなく、政府承認の銀行や証券会社が購入する権利をもちます。私達日本ではおよそ19の銀行・証券会社が直接購入することが出来ます。彼らは「プライマリーディーラー」と呼ばれます。
そして国債購入は入札に参加し、高値を付けた金融機関から購入したい分を落札していきます。
例えば、政府が額面100万円10年物国債(10年経ったら100万円で買い取る(償還))を10万円のクーポン(利回り10%)付で販売するとします。
この国債を高値を付けた金融機関から順次落札できるのですから、国債の人気が高ければ100万円でなく “105万円で購入する!” などやや高い値で入札に参加します。
もしこの金額で購入できたとすると105万円を投資して10万円のクーポンがつき、10年後に100万円戻ってくるので結果として「5万円お得(国債の購入額からすれば実質4.7%の利回り)」となります。
政府は100万円の国債を105万円で買ってもらえたので利益がでます。
次にこの国債を購入した銀行等が保険会社や他金融機関などに転売したとします。
もちろん手に入れた国債を転売するのですから利益をとらないといけません。「105万円で購入したこの国債を108万円で転売する」などするのです。
すると108万円でこの国債を手に入れた保険会社や他金融機関などは10万円のクーポンを手に入れることはできますが10年経ったのちに償還される金額は100万円であるため結果として2万円(利回り1.9%)の利益となります。
このように国債は市場で重要があればどんどん高値で売買され続け、結果として利回りが低下していくのです。
一方、国債の人気が無くなってしまうと転売する時に安値となりますので金利(利回り)は高くなってしまいます。

現在アメリカは景気減速懸念が高まっており、国債が売られだしている状況です。
ただ既に市場に売られている国債が不人気であろうが、政府は国債の額面だけを支払えばよいので既発債(既に発行した分)は大きな問題になりません。含み損(評価損)の問題はあると思われますが。
問題になるのは「今から発行する国債」の分となります。
現状国債の需要が低いと政府はより利回りが高い国債を販売しないと誰も買ってくれません。

高い利回りを付けるという事は政府の借金が増えることを意味します。
「借金をするために、より借金が増える」となります。
よって国債は常に価値を保つ必要があり、世の中の金利を適度に低くしておく必要も出てきます。
各国の中央銀行が政策金利を引き上げると市場金利が上がります。市場金利が上がると私達も高金利の定期預金や高金利の金融商品にお金を投資しようと考えます。
その一方、政府が発行する国債が市場金利を大きく下回る利回り(クーポン)しかつかないのであれば、金融機関はメリットがないと考え国債の入札に応じません。

日本銀行がしばらく “ゼロ金利政策” を継続してきたのも、こういった背景があったのかもしれません。
今、アメリカ国債は日本が一番保有している状況です。
昨今アメリカ国債の売りとドル安(円高)が進行していますが、この状況はアメリカ国債を保有している金融機関にとっては厳しい状況となっています。
ドル安時に購入したアメリカ国債が急激に円高になれば為替の影響をしっかり受けてしまいます。
またこれら国債が市場で需要がなければ、転売するにしても購入価格より下げた売りしかできなくなります。
この状況を避けるために、一部の国や金融機関は早々にアメリカ国債を売却する動きに出たと思われます。
2025年はしばらく世界経済が混乱しそうですので、債券利回りや金利など幅広く注視しておくと政治・経済がより見えてくるでしょう。
今回の基礎知識を生かして次回、日本政府・日本銀行が過去行ってきた金融政策のうち誤解されやすい内容について触れてみたいと思います。

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